Kindle Unlimitedで何か面白そうな本は無いかと探したところ、我孫子武丸氏の『殺戮にいたる病』という本が目に入った。
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。
犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
ああ、『かまいたちの夜』の人のやつかと、ゲーマーの私はそこに興味を持って読んでみることにした。氏の小説を読むのは初めてでした。
読んでみた感想を少し語りたいんですけど、いいですかね。
“いいですかね。”というのは、これからネタバレに関することに触れるので、気になる方はここから先を読み進めないでください、というお断りです。
……というわけで、少し感想を語ります。
感想を言いますと、卑怯だと感じました。
オチでビックリさせたいことありきで書かれた内容のように感じて、なんか物凄い子供騙しを食らったような感覚になりました。読んでいてそれを見抜けなかった自分が悪いということになるのでしょうか。
自分は単純にサイコパスを描いた猟奇小説なのかなと思って読んでいたんですけど、どうやらミステリー?だったみたいで、普通に読み進めていてこのオチとなると、なんじゃこれ、としか思えないのです。
だって、明らかに読者を騙そうとして意図的に読者へ与える情報を制限させていたからです。
オチに繋げるために、そのどんでん返しを見せたいがために読者へ与える情報を少なくしていたというのが伝わってしまい、ラストを読んだときの呆然感と言ったら無かった。
オチが凄いというより、読者を騙したいがための長々とした小説って感じです。あらかじめミステリー、と知っていて、何か作者が仕掛けた罠があると知りながら読んでいればまた違ったのかもしれませんが、自分は普通に小説として出てきたものを受け入れつつ読んでいたので、このオチはちょっと酷いなと感じた。
だって、ストレートに家族構成を記述していたら別に何も驚きもしない内容ですよね。
最後が予想していたのと別の人間だったからあー驚きましたねってだけで……。そのオチのために、ミスリードを誘いたいがために色々仕組んでいたというのが、自分からすると嫌な部分に感じました。
正直、グロ描写も結構キツかった。それでも先が知りたくて止まらずに読み進めることが出来たのは作者の筆致によるものだと思うのですが、それだけにオチが残念だった。
これが“叙述トリック”の面白さなのだとしたら、自分は理解できません。高卒の低能には、こういう小説は向いていないのでしょうね。だって単純に卑怯じゃないですか。
最初から稔が父親だと紹介されていたり、家族構成の全てが紹介されていればトリックでもなんでもないわけで。これを隠して、読者を騙したのが評価としてすごくて面白いっていうのは、自分は分からない。理不尽な書き方に感じた。
ずっと稔が息子だと信じ込んでいたからこその最後の衝撃は確かにあった。「え、ん?」となって、ページをめくる手が止まって確かに衝撃だったけど。その後、数分か数十秒して、「いやこれ作者の書き方が悪いだけじゃね?」と思ったのです。叙述トリックというか、作者の説明不足じゃんって自分は思ってしまったのです。
いくら美形と言えど、43歳のオッサン相手に女がホイホイついていくか?という感覚もあります。年齢で言えば、島木敏子が樋口に惚れるというのも、かなり現実味が薄い。こちらは読者を騙している部分ではないのでアレだが、ちょっとありえないだろと感じる。
その、書き方のテクニックは凄まじいのかもしれない―実際最後まで夢中で読み進めることが出来た―のですけど、頭の悪い自分がミステリーと知らずに読んだ単純な感想としては「長々とグロ描写含めて色々書いたけど読者騙したかっただけじゃん」という感想になってしまう。
自分がこういうの書けって言われてもムリですよ。ただ、消費者としての感想をエラそうに言わせてもらうと、自分はそう思うのです。
オチを知った上でもう1度最初から見直せば、違った視点で発見や面白さはあるのかもしれませんが、今はちょっと読み直す気は起きません。
以上です。