現在、プロゲーマーのウメハラさんが仙台→弘前を目指す300km散歩をおこなっています。
この配信を見ていると思い出すのは、自衛隊時代の行軍です。
いろいろな思い出が蘇ってきたので、今回はそちらを少し語りたいと思う。
まず、演習が始まる前の準備編です。
絶対に用意しなきゃいけない必須装備のほか、隊員は食料・私物装備品も持っていけます。
「行軍の準備に金は惜しむな」が鉄則です。
高くて良い靴下だったり、ソールだったり、ここらへんは金を惜しみません。多分みんなそうだったと思う。
押し入れ漁ったら、昔の私物が出てきました。
「これなんだっけ……?」ってくらい記憶が薄まっていましたが、ちょっと腰に巻いてみたら思い出した。これは弾帯の負担を和らげる装備です。
これを弾帯に着けることによって、腰に来る負担がメチャクチャ和らぐヤツです。いや~懐かしいな~。
“自衛隊 弾帯”でググってもらうと分かるんですけど、素の弾帯はクッションみたいなものがないので、腰に負担がかかります。
この補助装備をつけることでクッション性が増して、一気にラクになるって寸法。
こういう装備に金をかけることを惜しまないのが重要です。
食料・私物の装備品も自由に持っていけるとは言いましたが、多く持っていけばいいってわけでは当然ないですよ。食料なんか多く持っていったらそれが行軍時に“重り”となるわけですから。
食料を選ぶのにもセンスが問われます。
多分YouTubeを漁れば行軍用にオススメの食料とか出てくると思うんですけど、自分が辿り着いた“最適解”はコレでした。
ウィダーインゼリー。
※いまはウィダーの部分が消えて“inゼリー”っていう商品名になっているらしい。
これが自分の答えです。
水分と満腹感を同時に得られ、更に歩いている時でも手軽にサッと補給出来る。これがマジで最高だった。多分5、6個は持っていったような気がする。ペットボトルみたいに場所取らないし。
ちなみに演習前になるとPX(売店)は激混みしますw
ウィダーインゼリー以外に、塩分が取れる塩飴とかも重要でした。
これは行軍が終わってからの穴掘りとかしているときに役立つアイテム。
あとは、個包装のちっちゃいどら焼きみたいなのも自分は持っていきました。値段高いし、普段絶対食べないヤツですけど、演習だと別です。カスタード入りとかアンコ入りとか、バリエーションに富んでいるちっちゃいどら焼きが何個も入っているヤツ。
流れを簡単に言うと、隊容検査(準備をしっかり出来ているかのチェック)→行軍→陣地構築→戦闘訓練みたいな全体の流れ(これが数日間に渡っておこなわれる)があって、内容のキツさで言うと行軍と陣地構築が同レベルくらいだと思う。
隊容検査も嫌な思い出があるんですよねぇ。
隊容検査を紹介しているツイートあったので紹介します。
連隊は #新隊員 課程後期教育を実施しました。総合野営訓練に向けて #隊容検査 を実施し、訓練に臨む姿勢を教育隊長(副連隊長)が確認しました。#防衛省 #自衛隊 #練馬 #第1師団 #第1普通科連隊 #新教 pic.twitter.com/hmSMK5T5tp
— 陸上自衛隊 第1普通科連隊【公式】 (@1i_nerima) March 10, 2023
雨がドシャ降りのときに隊容検査が被ったときがあって、普段だったら全隊員が背嚢(はいのう)から装備を取り出すんですけど、大雨が降ってるってことで、隊容検査を受ける隊員が指定されました。確か“各中隊の隊列縦何番目、横何番目”みたいな感じでね。
マジでロシアンルーレットですよ。来るなよ来るなよ~とか思っていたらドンピシャで自分が指定された。
防水処置をしているとはいえ、パック処置している外側がずぶ濡れになるのは良い気分しなくて、連隊検閲開幕からテンションクッソ下がったことを覚えていますw
こんなピンポイントで自分に当たることある?みたいな。
まあ今となっては良い思い出ってヤツですけど。
っていうか、自衛隊の思い出なんて、その殆どが“今となっては”っていう修飾語がつきます。
リアルタイムでやっているときなんか“クソがぁぁぁあ”みたいなものだらけですよ。それでも、完全な非日常は今となっては良い思い出だよなあ。
あんなの娑婆じゃ絶対に体験できないし。キツかったけど、今となってはホント良い思い出です。“今となっては”な!!
……で、行軍が始まります。行軍はだいたい40kmくらい歩きます。
ひたすら歩きます。本当にひたすら歩きます。
夜になると目の前の人間に歩調を合わせて死んだ目で歩きます。
確か、1時間に10分程度の小休止があります。そこでしっかり身体を休めるのが重要です。ここでは手間を惜しまないのが重要。
準備では金を惜しまず、行軍では手間を惜しまずです。
手間っていうのは、装備品をしっかり外すことです。休憩時間がいくら少なくても、装備を外して身体を休ませるってのがマジで重要でした。
『グラップラー刃牙』の作者で知られる板垣恵介さんの自衛隊マンガでもそこに触れられていました。
板垣恵介さんが在籍していた第1空挺団は自衛隊の中でも一目置かれる化け物揃いの精鋭部隊です。
自分は銃剣道の訓練で習志野駐屯地に行ったことあるんですけど、駐屯地自体の空気がヤバかったですね。
だって、すれ違う人たちのほぼ全員が空挺徽章つけてるわけですからね……。胸に燦然と輝く空挺徽章。一般陸士から見れば敬意と畏怖の象徴でした。
すれ違ったらしっかり止まって、お疲れ様です!って、言っていました。
これが普通の駐屯地だったら、止まってわざわざ挨拶なんかしませんよ。そんなのいちいちやっていたのは新隊員のときくらいです。
でも習志野駐屯地は別です。そこらへん歩いている人たち1人1人が空挺徽章つけてるボスキャラなわけだから、そりゃすげーってなります。
マジで習志野駐屯地だけは空気が違いました。色々他の駐屯地に行く機会ありましたけど、習志野駐屯地だけは別格。怖い。
……話が逸れました。
まあそんな感じで、小休止はしっかりと手間を惜しまずに休息し、歩を進めていく。
自分が印象に残っているのは、真っ暗闇を歩いているときでも時々見えてくる、一般家庭の明かりです。
すっごい遠目で、家の明かりだったり自動車のライトだったりがポツンポツン見えるんですけど、それがなんか凄いんですよね。
ものすごい遠目からだから、さながら蛍の光みたいな感じです。
こっちは世俗から離れて軍隊みたいなクソキツい行軍しているのに、外の世界の人たちは暖かい家の中で家族団らんしたり、美味しいモノ食べたりしているんだろうなとか考えたりしていました。
あのときにしか味わえなかった独特な感覚、もう体験すること出来ないんだよな……。自分はもうただの長期引き籠もりだし、小銃や背嚢を背負って歩くなんてことは絶対に出来ない。
ウメハラさんの散歩配信を見たことで、当時の思い出がそこそこ蘇りました。
夜空を見上げたときの星の近さにも驚いたなあ。
とりあえず今回の話は以上です。新隊員のみなさん、行軍にウィダーインゼリーはオススメです。